一橋教員の本
貨幣経済と資本蓄積の理論
貨幣経済と資本蓄積の理論石倉雅男著 |
著者コメント
本書は,マルクスとケインズの貨幣理論,および,貨幣経済と資本蓄積に関する現代の政治経済学アプローチの立場から,資本主義経済の構造と動態をめぐる諸問題を検討している.第Ⅰ部「貨幣経済の政治経済学」(第1・2章)では,ケインズ『貨幣論』における貨幣理論の基本概念,マルクス貨幣論の論理構造について検討している.第Ⅱ部「資本・賃労働関係の政治経済学」(第3・4章)では,労働賃金のカテゴリーが支配する問題領域における雇い主と労働者のあいだの支配・被支配の関係,および,その現代的な形態としての非正規雇用の増加と所得格差の拡大について考察している.第Ⅲ部「資本蓄積・実現利潤・負債構造の政治経済学」(第5・6・7章)では,貨幣経済における資本蓄積と所得分配をめぐる基礎的な論点を検討したうえで,カレツキー,ミンスキー,および,ポストケインズ派経済学の分析視角に基づいて,投資・実現利潤・負債の三者の連関について検討している.さらに,第Ⅲ部では,貨幣的利潤の実現機構の基礎となる金融システムの構造変化に関連して,2008年以降の世界金融危機で表面化した,貸出債権の証券化をめぐる諸問題を検討している.