一橋教員の本

山の民の地域システム : タンザニア農村の場所・世帯・共同性

20世紀を考える

上田元著
東北大学出版会  2011年2月刊行
ISBN : 9784861631573

寄贈時著者所属:
 上田元(社会学研究科)

著者コメント

 途上国の農村開発や貧困削減は,一つ一つの世帯や村・農民集団を,個々ばらばらに考えがちです。しかし,人々の生活は,狭い範囲を超えて多くの場所を結びつけるネットワークのなかで営まれています。暮らしの条件はネットワーク上の位置に応じてさまざまですし,それは他所での変化に連動することも珍しくありませんから,一つの村の生活であっても,その理解にはネットワークの視点が不可欠です。もっとも,個別世帯の社会経済的地位や,それらが属する村のネットワーク上の位置だけでは,人々の生活実態を把握するのに十分ではありません。とくに,世帯間の共同性を考察に加えることが重要です。本書は,タンザニア北部,メル山斜面の農村社会を対象として行った虫瞰的な臨地調査を連ねて,農民が斜面に点在するさまざまな場所を結んでヒトとモノを行き来させてきた姿を描き,また灌漑水・家畜・森林をめぐる人々の関係,共同性を検討します。このようなボトムアップの地域システム論によって,場所のネットワークが人々の生活を支え,彼らの活動によって変化し,各所で経済自由化への多様な対処戦略を生み出してきたことを明らかにしながら,農村開発に新たな視点を提供しようと試みました。



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