一橋教員の本

グローバリズム

 
 

グローバリズム

 水岡不二雄
八朔社   2006年5月刊行
ISBN:4860141040   本体1,800円+税
 著者紹介

著者コメント

「21世紀の若者たちへ」シリーズの一冊として刊行された本書は、今日のグローバリズムについて、上級の高校生から大学学部学生を念頭において、できるだけわかりやすく説明したものです。とはいえ、通説を単に水で薄めただけの入門書ではなく、著者がこれまで研究、教育、そして市民活動のさまざまな部面で醸成してきたオリジナルな論点を多数盛り込んであります。
第1章では、これまでの、グローバルとローカルとを択一する不毛な論争の止揚をめざし、ネオリベラリズム・多国籍企業・従属理論という3つの層が折り重なったものとしてグローバリズムを規定しなおしました。第2章では、スペインとポルトガルに始まる諸国を結節点としたフロンティア拡張ならびにその衝突の過程としてグローバリズムをとらえ、それによって日本史について新たな照射を行うとともに、今日のグローバリズムが、米国による世界覇権のシステムであることを明らかにしました。第3章では、ネオリベラリズムのグローバリズムを支える市場原理主義イデオロギーの根幹にある新古典派経済学の命題ならびに前提について批判的に検討しました。第4章では、第1章でしめしたグローバリズムの3つの層の現実的な展開を扱い、資本の過剰蓄積が一方で多国籍企業の空間フロンティアの外延的展開をおしとどめ、企業が立地しない最貧途上国と多国籍企業が立地して経済の奇跡を演出した東アジア諸国との格差拡大をもたらしつつ、他方で投機資金のグローバルな跳梁をもたらしたことを述べ、これが最貧途上国におけるイスラム原理主義などの社会運動を引き起こしたことを示しました。第5章では、まず、アフガン・イラク戦争を契機に顕在化した国際政治多極化の動きについて触れ、次いで市場原理主義のオルタナティブとしてその対偶にポランニの提起した「互酬」概念を位置づけて吟味し、ここからオルタナティブなグローバリズムの可能性ならびにあるべき日本への展望を示しました。
グローバリズムは経済活動が世界空間に展開した編成のありさまです。本書の論述の随所には、『経済・社会の地理学』(有斐閣、2002年)で示された新しい経済地理学の体系が盛り込まれており、グローバリズムの理解をより深くすることに貢献しています。



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