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世界23校のトップビジネススクール幹部がHITOTSUBASHIに結集

  • 国際企業戦略研究科長一條和生

2015年夏号vol.47 掲載

一橋大学は、世界のトップクラスのビジネススクール27校が相互に連携して教育研究を行っているGNAM(GlobalNetwork for Advanced Management)の運営委員会メンバーとして活躍しています。今や政治、経済、社会などさまざまな領域でグローバル化は進展しています。こうした環境に対応するためには、世界中のビジネススクールがネットワークを結んで協力し合うことが不可欠なのです。
2015年4月23日・24日の2日間にわたって一橋大学で、そのGNAMの「GNAM Deans & Directors Meeting」が開催されました。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(一橋ICS)の一條和生研究科長に、その意義を聞いてみました。

東京ミーティングの三つの吸引力

一條和生国際企業戦略研究科長

GNAM参加校27校の大学院長(Deans)と幹部が年に2回、2日間にわたってフェイストゥーフェイスで話し合うのが、この会議です。各校のこれまでの活動の進捗状況をレビューし、今後の計画を話し合います。GNAMをさらに大きく発展させると同時に、GNAM参加校のメンバー間のネットワークをより強固なものにしていくのが目的です。
最初のミーティングは、2012年にアメリカのイェール大学で開催されました。そして、中国・北京、トルコ、スペイン・バルセロナと続き、昨年は4月にメキシコ、11月にアイルランド、そして今年は4月に東京で開催されたのです。11月にはインドのバンガロールで開催されます。
今回の東京ミーティングは、開催前から参加校の間で非常に関心が高く、GNAM参加校27校のうち23校から30人以上のメンバーが出席しました。関心が高かったのにはいくつかの理由があります。まず、東京という都市が魅力的であること。原発問題や地震などはありますが、それでも東京ほど民主的で自由で、安全で、古き良き伝統を保ちつつ同時に世界の最先端を歩む街は世界でも少ないという、世界的な評価があります。
二つ目には、「アベノミクス」と言われる新たな成長戦略のもとでの日本経済の復活が共通認識となっていること。世界第3位の経済大国日本が今どう変わろうとしているのか、自分の目で確かめたいという関心があるようです。
さらには、GNAMそのものはこれまで順調に発展を続けていますが、それをより拡大・発展させていきたいという参加校間の共通の思いがあります。だからこそ、これだけ多くのメンバーが結集してくれたのです。

日本ならではのコンテンツを用意

会議の様子1

東京ミーティングでは、日本ならではの趣向も凝らしました。今回は、Deans版のGNW(Global Network Week:学生を対象にGNAMで行っている短期集中講義)を行おうという構想のもとに学生版さながらのプログラムを組みました。参加者に短期集中的に最先端の日本を学んでもらうという発想で、日本が世界に対して提供できるユニークなコンテンツを用意しました。
具体的には、日本を代表する新聞の編集委員、ビジネス誌編集長とのディスカッションなどの場を設けて、日本企業のリーダーがどのような課題に直面しているのかといったことを、世界各国から集まってきたトップスクールのDeansや経営幹部たちとともに議論し情報を共有しました。その意義は、単に日本がどんな課題に直面しどう対応しているかを知るだけにとどまりません。日本は世界のさまざまな課題の実験的な先進国という面がありますので、日本のリーダーたちがこうした先進的・先駆的に起こっている問題に対してどう取り組もうとしているのかは、世界共通で関心があるところです。
であるからこそ、こうしたことをつねにウオッチしている新聞の編集委員やビジネス誌の編集長とのディスカッションや今後の展望について考える場を設けたのです。
もう一つは、株式会社ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長との1時間にわたるディスカッションです。日本が誇る代表的な企業であり、なおかつ世界が最も注目している企業の代表である柳井氏に直接お会いして多様なテーマについて議論し合う。まさに日本でしかできないことです。
それ以外にも、それぞれのセッションで日本の魅力をさまざまな形で世界のトップリーダーに示すことを考えました。たとえば、食事などを通じた交流も重要ですし、ある意味では日本の一番魅力的なところであるホスピタリティの素晴らしさを、GNAMのミーティングそのものの運営からも感じ取ってもらいたいと考えて準備しました。
このようにGNAMに新たなイノベーションを起こすということを、東京ミーティングでは打ち出したつもりです。今回の開催にあたっては、運営委員会のメンバーと電話会議などで十分に話し合って準備してきました。我々のプランは運営委員会からも非常に歓迎されました。

世界の経営大学院が果たす役割の大きさ

ビジネススクールと言えば、どうしてもアメリカやヨーロッパを中心に考えられがちです。最近では、中国がこの分野でも伸びてきたことが知られています。このミーティングには、遠くはブラジル、チリ、南アフリカ、ガーナ、さらにはトルコなどの大学院からも参加しています。今回の東京でのGNAM Deans & Directors Meetingの開催の経緯から、ビジネススクールの世界的な広がりが実感できます。ビジネス・プロフェッショナルの教育、経営者教育を担う大学院が、世界でどれだけ大きく発展していて、どれだけ重要な役割を果たしているかを知っていただきたいと思います。同時に、日本においてこうした大学院で経営学を学ぶことの意義を感じ取り、それをいっそう発展させていかなくてはいけないということを、より多くの人々に認識していただきたいと考えています。
日本の経営者の方々には、世界がどう動いているのかということを、もっともっと身近に知っていただきたい。そのきっかけづくりも、GNAMの重要な役割だと認識しています。

会議の様子2

会議の様子3

4月23日(木)、パレスホテル東京で行われた「Discussion with Media」の様子。
『日本経済新聞』『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』『日経ビジネス』の編集委員・編集長・副編集長らを招き、アベノミクスの解説、そして日本経済と社会のこれからについてディスカッションが行われた

一橋大学のレーゾンデートル

昨年メキシコで開催されたGNAM Deans & DirectorsMeetingで、私は今回の東京開催を自ら表明しました。一橋ICSが世界でリーダーシップをとっていくためには、こういう会議を開催して存在感を示すことは重要ですし、それを運営することで教職員や大学院生にさらに知見を深めてほしいと考えたからです。
一橋ICSの本拠地である千代田キャンパスには、一橋講堂があり、近隣には如水会館があります。国立キャンパスと並行して都心の中にある一橋大学のあり方を、世界各地で経営学の教育の最先端に立つ今回のGNAM Deans &Directors Meetingの参加者に知っていただくことにも意味があります。明治時代に実業人育成のために商法講習所として開設された本学は、後に東京商科大学、そして一橋大学へと発展してきました。一橋大学は日本の企業の発展に非常に大きな役割を果たしています。この一橋大学の発祥の地とも言える千代田キャンパスに来ていただくことで、歴史を含めた本学の存在意義を広く世界の人々にも知っていただきたいと思います。(談)

会議の様子4

会議の様子5

GNAM Deans & Directors Meeting(2015年4月23日・24日、東京)

参加大学名リスト(アルファベット順)

  • Asian Institute of Management
  • EGADE Business School, Tecnológico de Monterrey
  • FGV Escola de Administração de Empresas de São Paulo
  • Fudan University School of Management
  • HEC Paris
  • Hitotsubashi University Graduate School of International Corporate Strategy
  • Hong Kong University of Science and Technology Business School
  • IE Business School
  • IMD
  • INCAE Business School
  • Indian Institute of Management Bangalore
  • Koç University Graduate School of Business
  • London School of Economics and Political Science, Department of Management
  • National University of Singapore Business School
  • Pontifi cia Universidad Católica De Chile School of Business
  • Renmin University of China School of Business
  • Sauder School of Business, University of British Columbia
  • Seoul National University Business School
  • UCD Michael Smurfi t Graduate Business School
  • University of Cape Town Graduate School of Business
  • University of Ghana Business School
  • University of Indonesia Faculty of Economics
  • Yale School of Management

(2015年7月 掲載)