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令和2年度新入生へのメッセージ

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令和2年4月
一橋大学長 蓼沼宏一

 新入生の皆さん、入学おめでとうございます。また、新入生の保護者の方々にも、お祝いを申し上げます。一橋大学教職員一同を代表しまして、すべての新入生を心より歓迎いたします。 

 今年も入学式で新入生の皆さん全員と一堂に会し、教職員や在学生と共にご入学をお祝いすることを大変、楽しみにしておりましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、式典を中止せざるを得なくなりました。誠に残念ではありますが、皆さんの健康と安全が最優先であると考えた上での判断ですので、ご理解いただきたいと思います。

 世界には、今回の感染症拡大と経済の混乱のように、時として思わぬ困難な問題が生じます。人類の歴史を振り返っても、疫病、災害、戦乱などが絶えることはなく、その時々で人間は限界に直面し、誤りを犯すこともありながら、人々の英知と協働によって困難を乗り越えてきました。今後しばらくは、世界の混乱は続くと思われますが、その先の光を求めて共に歩んでいきましょう。

 混乱は永遠に続くものではありません。そして、大学の学部では4年間、大学院では2年間から5年間という長い時間が皆さんの前にはあります。皆さんが一刻も早く平穏な学生生活を送れるように、すべての教職員が出来る限りの努力を続けていきますので、皆さんもどうか希望を持ち続けて、入学前に抱いた夢を実現できるように努めてください。

 皆さんが入学された一橋大学は、森有礼が渋沢栄一や福澤諭吉などの協力を得て1875年(明治8年)に開設した商法講習所を起源としています。明治維新から間もない当時の日本は、貿易や商業を担える人材の育成が国家的な急務であり、それに応えるために商法講習所は設立されました。それ以来140年を超える歴史の中で、本学は日本における社会科学の多様な分野の研究をリードする大学に発展するとともに、常に社会を支え、導く人材の育成にも情熱を注いできました。

 その最大の特色は、密度の濃い少人数ゼミにあります。一橋大学のゼミは、単なる少人数の授業ではありません。最先端の研究に日々真剣に取り組んでいる教員が、一人ひとりの学生に向き合い、教員と学生、あるいは学生同士が真剣な議論を重ね、真理を探究する場であるだけでなく、様々な機会に人間同士としての交流を深め、人格を磨く場でもあります。現在は、直接対面する形での授業が困難な状況ではありますが、皆さんには、ぜひ、本学の誇るゼミ制度の下、信頼して、教員や同僚の学生と共に、様々な方法で研鑽を積んでいただきたいと思います。

 ゼミや講義を通じて一つの専門分野を深く学び、様々な分野へと関心を広げていけば、やがて「学ぶ」ということがどういうことなのか、どうすれば知識や能力を身に付けることができるのか、それが分かるようになります。長い人生の中では、仕事をするために新しい知識を習得する必要が生じることも、あるいは豊かに生きていくために再び学問を修めたいと思うこともあるでしょう。そのときにも、大学時代に深く広く学ぶ経験を積んだ人は、自ら学び直すことができるものです。

 さらに、一橋大学では、同窓会である如水会などのご支援により、大変充実した留学支援制度を備えています。これまでに非常に多くの本学の学生が海外留学を果たし、質の高い授業や世界各国からの学生との交流を通じて、一段と高い能力と多様なものの見方を身に付け、逞しく成長して帰ってきました。この新型コロナウイルス感染症の問題がいずれ収束しましたら、皆さんもぜひ、本学の支援制度を活用して海外の交流協定校への留学を目指してください。

 一橋大学は、一人ひとりの学生を丁寧に育成し、責任を持って社会に送り出すことを何よりも大切にしています。皆さんが現代の社会で大いに活躍する人材として巣立っていくために、私たち教職員も常に質の高い教育の実現を目指して、それぞれの学生が歩む大学生活を共に大切にし、発展していきたいと思います。

 皆さん一人ひとりが喜びと実りの多い大学生活を送られますようにと心からお祈りし、私からの歓迎の言葉とさせていただきます。



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