戦争花嫁と「花嫁学校」:移民女性への越境前「主婦化教育」をめぐって

 本研究は「戦争に伴う人の移動と結婚が重なったとき、女性には何が求められ、どう位置づけられるのか」という問いを明らかにするため、結婚を機に移住する女性向けに開かれた「花嫁学校」を通して浮かび上がるジェンダー規範に着目する。「理想的な妻」とは誰なのか、国や時代による固有性と普遍性を見出すことが可能なのか、を検証するべく1950年代に日本人戦争花嫁向けに開かれた米国赤十字社提供花嫁学校を議論の中心に据えながら、類似花嫁学校で教えられた内容を空間および時間を拡張して検討する。なお検討は、①史料収集と分析、②質的調査(質問紙またはインタビュー)の2方向から比較して行なう。
本研究では、戦争花嫁の定義を「第一次世界大戦や第二次世界大戦を中心に、戦争に伴う人の移動のなかで兵士・軍属と結婚して配偶者の国へ移住した女性」へと組み替え、日本の戦争花嫁研究が対象とするべき視座そのものを拡張する。