アジア新興国のグローバルバリューチェーン参加が国内労働市場と地域経済に与える影響

本研究は、アジアの発展途上国におけるグローバルバリューチェーン(GVC)への参加が、雇用、賃金、労働時間といった労働市場に与える影響を、産業・地域・労働者の属性ごとに精緻に測定することを目的とする。

GVCは国際分業の深化によって発展途上国の経済成長に寄与してきたが、その恩恵はすべての労働者に均等に分配されているわけではない。とりわけ、経済危機やパンデミック時には脆弱な労働者が深刻な影響を受けてしまう。

本研究では、産業連関表を用いたマクロ的視点と、地域や企業レベルのミクロデータを活用した実証分析を融合し、従来の研究アプローチにはない包括的な分析を実現しようとするものである。これにより、GVCを通じた雇用創出や賃金変化の地域差、労働者属性による格差の実態を明らかにする。本研究は、発展途上国における貧困削減や社会的保護制度の設計、さらに持続可能な国際分業体制の構築に資する知見を提供するものである。