グロティウス『戦争と平和の法』における国家論

現代の世界における戦争の拡大に鑑み、戦争の抑止のために国家が果たすべき役割が、今改めて問われるべきである。本研究は、オランダの法学者、フーゴー・グロティウス(1583-1645)の主著である『戦争と平和の法』を、近代国家学の古典として憲法学の観点から分析することを目指す。すなわち、同著において論じられている国家の発生、本質及び機能について分析する。特に国家論の観点から、『戦争と平和の法』における国家の軍事化及び公戦・私戦の抑止と、自然法論及び国家論の連関について分析し、さらに自然法論及び社会契約論の系譜の中でのグロティウスの国家論の位置付けについて検討する。  従来の研究は、『戦争と平和の法』における対外的戦争を規律するための規範にもっぱら着目していた。本研究では、初期近代の国家論におけるグロティウスの位置付けを捉え直し、さらに現代の国家論と架橋することを試みる。