生と死の選択をめぐる生命倫理学的・福利論的研究:〈生存自体の価値〉と自律の価値

本研究の目的は、生死の選択において基盤となる代表的諸価値の本性の解明および、生命倫理学における役割を特定することである。生死の選択において基盤となる〈生存自体の価値〉や自律の価値をめぐる議論は、生命倫理学において活発に展開されてきたが、これらの諸価値がいかなる条件で他の価値に優越するかといった議論は膠着状態にある。そこで博士課程1年目には、非常に長い生や不死の望ましさに関する文献を精査し、不死の想定が〈生存自体の価値〉を論じる上で意味をもたないことを示した上で、当該価値の理論的特徴を整理・特定する。そして、博士課程2年目には、自律尊重原則をめぐる生命倫理学の議論に焦点をあて、尊重されるべき自律的選択とそうでない自律的選択の違いを明らかにした上で、自律の価値の本性と役割を解明する。博士3年目には、理論的精査を経た上記2つの価値を、安楽死等現実の問題へ再適用し、その現実的含意を詳細に確認する。