社会経済的地位と幸福観:「小さな幸せ」が低SES層の健康状態に与える影響
教育や雇用、所得などの機会に恵まれない社会経済的地位(SES)が低い環境に置かれた人々は、精神的健康も身体的健康も悪い傾向にあることが指摘されている。SESが低い環境では、将来のことまで考える生活上の余裕が無いため、目の前の日常を生きようとする「短期的志向性」を身につけやすい傾向にある(Willis, 1997)。そこで本研究では、SESが低い環境に置かれた人々においては、日常の些細な出来事の中で感じる「小さな幸せ」(e.g., 道端に咲く花がきれい)が、精神的・身体的健康を高める上で重要であるという仮説を2つの調査によって検証する。研究1では、質問紙調査を行い、小さな幸せと精神的健康に対するSESの調整効果について検討する。研究2では、生態学的縦断調査(EMA調査)を行い、SESの調整効果について生態学的妥当性が高い手法を用いてより詳しく検証する。