恋愛関係におけるジェンダー不平等の隠蔽とその背景-ポリアモリーの日米比較から

20世紀初頭以降、「健全」で「自律した」恋愛関係を自らの責任と努力によって築くべきだとする言説が台頭し、恋愛における苦悶は個人の責任とされるようになった。しかし、こうした苦悶は男女が置かれている異なった社会経済的立ち位置に起因しており、決してジェンダー平等に生じるものではない。本研究では、恋愛の苦悶経験におけるジェンダー不平等が、こうした苦悶を自らの力で解決することを要求する個人主義的なメディア言説によって隠蔽される方法を明らかにすることを目指す。その際、近年こうした言説に特に曝されているポリアモリー当事者(複数人と合意の上で同時に恋愛・性関係を築く人々)を事例とする。

 具体的には、米国と日本でポリアモリーについてのメディア言説の分析と当事者へのインタビュー調査を行い、日米比較、および言説と当事者の関係実践との比較を通してジェンダー不平等の隠蔽メカニズムを明らかにする。