ゲオルク・ジンメルの倫理思想の解明──社会と倫理の関係に着目して──

社会学の創始者として名高いゲオルク・ジンメルの著作は、社会学分野のみにとどまらず、他にも哲学や倫理学、美学にも及び、幅広いテーマに及んでいる。著作全体の多面性から、ジンメルの思想は主に〈社会学〉とその他の多様な〈哲学〉群に分離され、とりわけ〈社会学〉へと還元されてきた。一方、近年ではこのような〈社会学〉偏重のジンメル受容を改め、彼の〈哲学〉群を再評価しようと試みる国際的動向が存在する。本研究の主眼は、このような研究動向を踏まえつつ、ジンメルの〈社会学〉と〈哲学〉の関係を解明することにある。その目的は、現代における相対主義的な個人主義と道徳そして社会の関係を論じることである。この目的のもと、本研究は⑴ジンメルの倫理思想の研究⑵社会学的著作への倫理思想の影響⑶「個人」と「他者」からなる社会と倫理の在り方、という見地から諸著作を研究する。