日台近現代美術史における双方向的影響:在台日本人画家の活動と植民地経験の再考

本研究は、日本統治期台湾で活動した日本人画家(在台日本人画家)の美術活動に着目することで、日本の帝国主義時代に「外地」へと広まった美術活動の一部を復元し、特に台湾の視点から日本近現代美術史の再考を目指すものである。従来の研究では、帝国(日本)から植民地(台湾)への一方的な影響が指摘されやすかったが、本研究では、台湾という土地や人々から日本の画家へともたらされた影響を含む、双方向な関係性を解明する。具体的には、台湾美術展覧会の中心人物として活躍した郷原古統(1887-1965)、台南師範学校に勤務し、日本でも珍しいエッチングに取り組んだ山本磯一(1896-1962)、台湾人洋画家・陳澄波(1895-1947)に師事した磯部正男(1922-2005)という三者の異なる植民地経験を掘り起こし、比較検討する。なお検討は、①作品及び文献資料の収集と分析、②遺族への聞き取り調査の2つを主軸に行う。