参加学会
Society for Personality and Social Psychology (SPSP) Annual Convention 2025
会場
Colorado Convention Center(アメリカ合衆国・デンバー)
参加レポート
これまでの研究成果についてポスター発表を行うため、2025年2月19日~22日にかけて、デンバー(アメリカ合衆国)で開催された人格・社会心理学分野の国際学会Society for Personality and Social Psychology (SPSP) Annual Convention 2025に参加した。1日目、2日目はプレ・カンファレンスと呼ばれる研究分野ごとの学術集会が開かれ、2日目の夕方から4日目にかけてはメイン・カンファレンスが開催された。
1日目のプレ・カンファレンスでは、Psychology of Extremismに終日参加した。特に印象に残っている発表は、北京大学のYang Bai先生によるAwe(畏怖・畏敬)の研究である。Aweによって喚起された小さな自己(small self)の感覚が集団的活動に与える影響を複数の国で比較検討した研究であり、研究の内容から手法まで大変勉強になった。

2日目のプレ・カンファレンスでは、午前にHistorical Psychology、午後にCultural Psychologyに参加した。Historical Psychologyでは世界的に著名な人類学者であるハーバード大学のJoseph Henrich教授のお話を初めて対面でお聞きすることができた。Henrich教授の“WEIRD”理論は私の専門である文化心理学にも非常に大きな影響を与えており、そのような方から最新の研究に関するお話を聞くことができたのは大変貴重な機会であった。午後のCultural Psychologyは私の専門分野であり、今回の学会で最も重視しているセッションの1つであった。ここでは、私が昨年夏に留学していたスタンフォード大学のJeanne Tsai教授のラボメンバーや、昨年12月にJSPSロンドン・シンポジウムにてイギリスでお会いしたサセックス大学のAyse Uskul教授のラボメンバーと再会することができ、多くの研究仲間と最近の研究状況について意見交換を行うことができた。また、奇しくも、今年度文化心理学分野に大きな貢献をした研究者に贈られるAward for Outstanding Contribution to Cultural Psychologyの受賞者が、昨年お世話になったJeanne Tsai教授とAyse Uskul教授であった。このような分野の最前線で活躍されている先生方と共に研究に従事することができていることを改めて有り難く思った。先生方のラボメンバー達と今回の受賞を祝うことができたことも良い思い出となった。

賞状と記念撮影
3日目のメイン・カンファレンスでは、様々なシンポジウムやポスター発表を聴講した。特に印象に残っているのは、ミシガン大学の北山忍教授、及び北山教授の弟子であり現在デューク大学助教のCristina Salvador先生による一連のアフリカ研究である。これまでの文化心理学研究では十分な検討がされてこなかったアフリカ地域で調査を行い、Self-Promotive Interdependenceと彼らが呼ぶ新しい相互協調的自己観の在り方を提唱した本研究は非常に興味深く、大変勉強になった。2年前に北山先生が来日されたときに「今アフリカで調査をしている」というお話をお聞きしたが、その一連の研究成果を今回のシンポジウムで知ることができた。3日目の夕方には授賞式に参加した。今回、人格・社会心理学分野の国際化に貢献したアメリカ国外の大学院生に贈られるInternational Travel Awardという賞をSPSPより頂くことができた。授賞式ではネットワーキングイベントも開かれ、同世代の様々な研究者と知り合うことができた。中には一緒に共同研究をしようと現在話を進めている研究者もおり、これからの研究がますます楽しみになった。
4日目(最終日)のメイン・カンファレンスでは、ポスター発表を行った。今回は昨年夏に訪問したスタンフォード大学のJeanne Tsai教授との共同研究の成果を発表した。本ポスターは発表前より注目を集めており、23名の研究者からAttending(参加予定)を得たため、最も注目されたポスター発表の1つとして大会運営よりバッジを頂いた。当日は非常に多くの参加者が発表を聞きに来て下さり、1時間の発表時間があっという間に感じられた。このような分析もしてみたらどうかというアドバイスや、次にどのような研究を行っていくべきかについてのディスカッションなど、今後の研究に直接役立つ話し合いが数多くできたため、非常に充実したポスター発表となった。

このように学会期間中は世界中の最新の研究について学び、自身の研究について考えを深めることができたが、それだけでなく、海外の研究者とのネットワークを広げることができたことも今回の出張の重要な成果である。例えば、3日目の夜にはスタンフォード大学のJeanne Tsai教授のラボディナーに招待して頂き、多くの研究者と交流することができた。また、4日目の夜には2年前に香港で開催されたアジア社会心理学会(AASP)の際に知り合った同世代の研究者とディナーに行き、自身の研究についてお互いに近況報告することができた。
今回の国際学会への参加は、今後の研究を発展させる上で非常に有意義な経験となった。日頃より大変手厚いご指導をして下さっている一橋大学社会学研究科の宮本百合教授に深く感謝申し上げる。最後に、本出張にあたり、一橋大学博士イノベーション人材育成プロジェクト『The Bridge to the Future』に全面的なご支援を頂いた。本支援が無ければ今回の出張は実現しなかった。本プロジェクトの手厚いご支援に心より感謝申し上げる。今後も本プロジェクトのご支援にこたえられるように、最大限努力していく所存である。
