参加学会

International Australian Studies Association (InASA) 2025 Biennial Conference

会場

Macquarie大学 (オーストラリア・シドニー)

学会概要

幅広い分野の研究者が集うことを特長とする、オーストラリア研究に関する国際学会。2年に1度の開催であり、2025年度は“Australian Studies in the 21st Century: Human and More-Than-Human Worlds, Exploring interactions, perspectives and futures” をテーマに、人間(人類)の経験 human experiencesおよび“人間(人類)以上の世界” more-than-human worldsについて、先住民研究をはじめ歴史、文学、文化、美術、政治、メディア、社会学、文化人類学、地理学、生態学など、多様なディシプリンの知見によって学際的かつクロスカルチュラルな対話を深めることを目的とする。https://event.mq.edu.au/inasa-2025-biennial-conference

参加レポート

SPRING事業の国際学会発表支援を受けて、私は2025年2月5日から7日までオーストラリアのシドニーで開かれたInternational Australian Studies Association (InASA) 2025 Biennial Conferenceに、発表者として参加してきました。初めての海外学会参加です。

2年に1度の開催であるInASAは、「オーストラリア研究」を共通項に、広く人文科学・社会科学・自然科学の研究者が集うことをその特長としています。2025年度の会合にはオーストラリア内外(日本、中国、ベトナム、北米など)から150名を超える参加者があり、日本からの出席は、私を含め2名でした。会期中は数多くの講演・発表のほか、映画上映イベントや会食が催され、多様な参加者が各々の視点から活発に議論・対話を交わす場に恵まれた3日間となりました。

私は2日目に、 “Bride School as a Reflection of Australian Society: Japanese War Brides in 1950s Kure, Hiroshima”と題した発表を行ないました。本発表は「1950年代前半期オーストラリアのジェンダー規範、アジア系女性移民へのまなざしを明らかにするため、広島県呉市で日本人戦争花嫁向けに提供された渡豪前教育『花嫁学校』を詳しく眺める」という研究内容で、博士論文の本論の一部となる予定のものです。拙い発表ではありましたが、質疑応答ではジェンダー史や文学、映像制作、日本研究などさまざまな研究領域の聴講者からコメント・情報さらには激励までもが寄せられ、とても充実した時間となりました。今回得られたフィードバックや研究者ネットワークによって発展させた研究成果を携え、また次回2027年度のInASAにも参加したいという目標ができました。

このように開かれた環境で多様性と柔軟性を備えたInASAは、同時に、「アボリジナルの人びとから奪ってきた資源の上に現在のオーストラリアが存在する」という現実のなか学術研究はいかにあるべきか、という非常に深く重要な問いに向き合ってもいます。さまざまな研究領域を代表する研究者たちが「最新の」研究成果を話し合いますが、それは既存の学問的蓄積から不可視化されていた事物を見つめ、掘り起こしていくという営みでもあります。近年のオーストラリア社会の動向把握に加えて、こうした先達の取り組みや営みを多様なテーマにおいて知ることができたのは、たいへん貴重な経験でした。なお現地で、学会運営メンバーの方に国外からの参加を温かく歓迎していただけたことも、たいへん励みになりました。自分の研究が社会貢献できる可能性を認めていただけたのは、駆け出しの研究者にとって何よりも嬉しいものです。このような機会は、SPRING事業の支援がなければ実現しませんでした。このたびは国際学会への参加と発表へ背中を押してくださり、ありがとうございました。支援者の皆様へ心より感謝申し上げます。

学会の様子
個別セッション会場