日系アメリカ人2世に対する帝国日本の留学生教育:「残日2世」に着目して

本研究は、1930年代を中心に日本に留学し、学業を終えた後も当地に残留した日系アメリカ人2世を「残日2世」と呼び、彼ら彼女らに対する教育の史的展開を分析することで日系人と帝国日本の関係性を解明する。アジア・太平洋戦争開戦時、推定5万人以上の2世が日本に居住していた。しかし残日2世を扱った研究はごく限られる。 アメリカにおける日系人史研究は1960年代末以降、当事者による権利獲得運動と連動しつつ発展した。そこでは、日系人が人種差別に抗してアメリカ人になりゆく物語が構築され、日本との紐帯やそれに伴う加害者的側面は捨象されてきた。1990年代以降、2世の日本留学に関する研究が登場するが、それらは帝国日本へと加担した残日2世の能動性を等閑視している。それに対し、本研究は2世留学生を外交・戦争・帝国主義に活用しようとした日本の各勢力と、逆に帝国日本を利用し再編させた残日2世の相克・共犯という新たな歴史像を提示する。