戦後日本の中小企業における親身な労使関係の形成と変容
本研究は、戦後日本の中小企業で展開されてきた、経営者が従業員の生活に深く関わる「親身」な労使関係の実態とその変容を明らかにする。
「親身」な労使関係とは、家に朝起こしに行くこと、借金の肩代わり、寝食の場や縁談の提供、家族や私生活に関する相談対応などを含み、従業員が経営者を「おやじ」と呼んで慕うような親密な関係に発展する特徴がある。これらの支援は労働条件や福利厚生の前段階のものとして、従業員を職場に定着させるために重要であり、多くの小規模事業所では経営者が個人的に負担してきたものであった。
本研究の意義は、質的調査によって「親身」な労使関係の実態を明らかにし、職場が従業員の生活問題の解決に果たしてきた機能を位置づける点にある。また、これらが衰退している状況を分析することで、これを形成・変容させる社会的条件を解明する。そして、その衰退を補うための労働政策・雇用政策の検討に寄与する。