新しい両立可能性問題―決定論と機会の平等の両立可能性問題―
自由意志の哲学と呼ばれる分野において、決定論と自由意志の両立可能性がこれまで活発に議論されてきた。これは、人間の行為が自然法則に従って因果的に決定されているという考え(=決定論)と、人間が自らの自由な意志で行為する自由な行為者であることが両立するかを問う問題である。こうした議論の蓄積を踏まえて、本研究では、決定論と機会の平等の両立可能性という新しい両立可能性の問題、つまり決定論と様々な機会(社会的・経済的な成功を収める機会、幸福な人生を送る機会など)の平等が両立可能かという問題とその含意について研究を行う。具体的には、①決定論のもとで機会の平等を重要な価値として整合的に理解することができるか、②社会的・経済的な機会の平等といった重要な理想に関してこの問題はどのような含意をもつか、③この問題は人間の人生(幸福・人生の意味)に対してどのような影響を及ぼすか、といった問題に取り組む。