ミッションドリフトの生起メカニズム及び組織に及ぼす影響―地域新電力における検討―

本研究の目的は、組織のミッションドリフトという現象に焦点を当て、事前に掲げられたミッションがどのように事後的に変化するのか、その変化が組織に及ぼす影響を解明することにある。組織のミッションは、組織が「何者であり」「何を行い」「なぜそれを行うのか」を明示し、組織の存在意義を表現するものである。そのため、ミッションドリフトの分析は、組織戦略の方向性における根本的な転換を理解する上で有用である。本研究では、2016年以降の日本の電力小売市場完全自由化により誕生した地域新電力を対象にミッションドリフトを検討する。これらの事業者は、利益追求に加え、社会貢献や再生可能エネルギーの推進というミッションを掲げるが、その追及や維持に伴う課題が多く指摘されている。本研究は、この文脈を活用し、ミッションドリフトの発生メカニズムやその影響を明らかにし、組織の存続や成長、ミッションの維持に資する実践的示唆も提供する。