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一橋大学SSPと公認会計士如水会との連携による「会計教育のイノベーション」

2017年夏号vol.55 掲載

一橋大学商学部では、2013年度以降の入学者を対象とした教育プログラム「渋沢スカラープログラム」(SSP)を実施している。学部1年次終了時点で約15人の学生を選抜。選抜された学生は、グローバルな環境で活躍できる人材に必要な理論的思考力・分析力・コミュニケーション能力を身につけるため、さまざまな講義を受講することができる。
今回紹介する「Interactive courses on Business Basic」(Management, Marketing, Accounting, Finance)は、2年次のカリキュラムのコアとなる科目群だ。その名の通り、経営・マーケティング・会計・金融分野の基礎知識を学習しながら、海外からの留学生と英語による双方向での議論を行うことで、自らの主張を積極的に発信できるようになることを目指している。そして、3年次からの海外留学で十分な成果をあげることが期待されている。

講義写真1

講義写真2

講義写真3

講義写真4

講義写真5

講義写真6

このプログラムには、佐々誠一氏(1976年商学部卒)、鈴木泰司氏(1993年商学部卒)をはじめ、深田豊大氏(1994年商学部卒)、田邉朋子氏(1996年商学部卒)、矢野貴詳氏(1997年経済学部卒)、友野敦史氏(1998年商学部卒)、小澤季広氏(2001年修士課程修了)らが講師として参加している

大学と公認会計士如水会との連携で「実務家による英語での会計授業」が誕生

この科目群の内、Accounting科目の開設と運営には、公認会計士如水会が深く関わっている。きっかけは、2012年3月に行われた同如水会の会合で、会長に就任した佐々誠一氏(元あずさ監査法人専務理事/株式会社ブリヂストン取締役・監査委員会委員)と、商学研究科の万代勝信教授との"立ち話"だった。
佐々氏からの「公認会計士如水会として何かお手伝いできることはないか」という問いかけに対し、万代教授は「グローバル化への対応が課題」と返答。その後、「国際プログラムを設ける」「学部生に対しての実務教育を充実させる」との連絡があり、公認会計士如水会のメンバーと商学研究科の福川裕徳教授とで検討を重ね、「実務家による英語での会計授業」の実施に至った。

監査法人BIG4で活躍中のOB・OGに加えネイティブの外国人会計士も講師に迎える

講師陣には錚々たるメンバーが名を連ねる。前出の佐々氏が大学での教育経験を活かして授業の基本方針を策定し、"BIG4"と呼ばれる四大監査法人(有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、新日本有限責任監査法人、PwCあらた監査法人)から、トーマツのアカウンティング&ファイナンスリーダーである鈴木泰司氏をはじめ、グローバルビジネスの最前線で活躍する人材が講師に就任。
生きた英語による授業を提供するという観点から、BIG4に勤めるネイティブの外国人公認会計士も参加した。
学習を通して、学生に伝えたいこと、学んでほしいことについて、佐々氏・鈴木氏はそれぞれ次のように語る。

佐々木氏プロフィール写真

「教えることはもちろんですが、それ以上に『見せたい』という思いがあります。現在、グローバルなビジネスの第一線で活躍する公認会計士たちの生の姿を見せることで、それが明日の君たちなのだというメッセージが伝われば」(佐々氏)

鈴木氏プロフィール写真

「会計はグローバルな言語であることを学んでほしいですね。グローバルなコミュニケーション言語として英語があるのと同様に、グローバルなビジネス言語として会計がある。その二つが備わっていれば、どこの国に行っても会話が成立し、同時にビジネスを行うことができるということを、私は一貫して伝えています」(鈴木氏)

記念写真

「講師の方々に、自分の将来を投影することができました」

河野 直樹氏(右から2人目)
2017年卒・SSP第1期生(大学在学中に公認会計士試験に合格)

この授業の受講がきっかけで、公認会計士を目指す決意を固めました。先輩である講師の方々に、自分の将来を投影することができたからです。3年次になり、留学と会計士試験を両立させるのは大変でしたが、「先輩たちのようになりたい」という思いを励みに、困難を乗り越えることができました。今度は私が後輩を支援する番。そして、後輩の支援を通して社会に貢献することが自分の役割だと感じています。(談)

(2017年7月 掲載)