本部の概要

ガバナンスのパワーハウスとして

一橋大学の教育・研究活動並びに管理運営の国際化を総合的に推進するために一橋大学経営企画委員会国際戦略部会を発展的に改組し、「国際戦略本部」を設置する。この国際戦略本部は、学長のリーダーシップの下、研究担当の副学長を本部長とし、本学の国際戦略構想に基づき、まず国際的な教育・研究活動と大学そのものの国際化が円滑に実施されるようアクション・プランを作成する。次にアクション・プランの実施にあたっては、それらの活動が機能的かつ機動的に行われるようにするため、必要に応じ関係部局間の調整を図るとともに指揮を執る。

1. 国際戦略本部 ― 機動的な組織体制への改革

1. 学長のリーダーシップ

国際戦略本部を学長直属の組織とすることにより、学長のリーダーシップの下に学内横断的で迅速な対応が可能となる。また、国際戦略本部の基本方針決定を学長、研究担当副学長、教育担当副学長、社会連携担当副学長及び事務局長を構成メンバーとする常任役員会とすることにより、機動性を発揮することが可能となる。

2. 事務職員と教育職員のコラボレーションと外部人材の活用

国際戦略本部の中核となる国際戦略室は、事務職員と教育職員を一体化した組織とし、互いに対等な立場で総合的に国際戦略構想及びそのアクション・プランを推進する。また、国際関係業務の経験豊かな学外の専門家を国際戦略総括ディレクターとして登用することにより、グローバルな視点から、本学の多角的かつ多様な国際化を推進する。

3. 卒業生組織との連携

本学の卒業生会である「如水会」との連携により、国際戦略構想に基づく具体的なアクション・プランを実行する際、世界約60カ国に点在した会員のネットワークをAlumni Associationとして最大限に活用し、教育・研究活動地域の多様化を図る。この連携を効果的に活用することにより、わが国の経済や社会文化の発展に繋がる人材を世界各地から集めることができるだけでなく、本学の教職員や学生が世界各国で活躍するためのサポート体制の充実に繋げることができる。このことは、世界に通用する社会科学の総合大学としての「一橋ブランド」を世界にアピールするための一つの手段ともなる。

さらに、如水会と連携し如水会の会員を中心に本学の周辺地域(国立市、小平市など)住民を対象とした中国へのスタディ・ツアー(社会人向けセミナー)等を開発し、本学の海外拠点である北京事務所を教場とした社会人向けのプログラムの提供を検討する。

4. 帰国留学生の組織化とネットワーキング

本学を卒業し、母国で活躍している帰国留学生は大学の財産であり、海外との人的ネットワークである。本学の今後の外国人留学生募集活動、教育研究の国際的展開に積極的に関わってもらうためにも海外に如水会と協力し組織を立ち上げ、本学に留学経験のある外国人留学生(帰国留学生、日本語・日本文化研修留学生、交流学生等を含む)のデータベース化に取り組みながら、本学と海外とのネットワークを強化する。

5. 総合的な調査・研究機能の整備

国際戦略本部は、国際的な教育・研究活動や大学の国際化等に関する調査・研究機能をも兼ね備え、「競争と協働」がグローバルな規模で進行している世界の高等教育の潮流における最新情報を収集・分析し、必要に応じて、そのデータを学内各部局に提供できるようにする。このことは、国内外の優れた国際的な教育・研究活動の取組みや管理運営機能の国際化に関する先行事例が蓄積されることになり、データベースの構築に繋がるとともに、本学の国際的事業への取組みに関する評価の際の重要な資料となる。

6. 国際学術情報拠点としての附属図書館

本学の附属図書館では、国立大学図書館協会学術国際コミュニケーション委員会に参加し、日本関係の学術情報を国際的に提供するとともに、世界の大学から本学で必要な学術情報の提供を受けている。これらの学術情報の国際的流通に積極的に参加し、制度の充実と迅速な流通に貢献できる体制整備のより一層の推進を図る。

7. アドバイザー制度の導入と外部評価制度の導入

本学の国際戦略構想に基づき、具体的なアクション・プランを作成する際、社会のニーズに応えるため、学外の有識者や専門家を国際戦略アドバイザーとして、5名程度迎え、積極的に関わってもらう。また、定期的にアクション・プランの進捗状況を含めた本学の国際的な教育・研究活動と国際化への取組みを総合的に評価してもらう。さらに時流に乗り遅れることが無いよう、また、社会のニーズを的確に反映させるため、国際戦略構想そのものの見直しにも国際戦略アドバイザーの意見を反映できるようにする。

  1. 国際戦略アドバイザー
    • 国際的な活動を行う企業関係・・・(1人)
    • 如水会関係・・・・・・・・・・・(1人)
    • 報道・広報関係・・・・・・・・・(1人)
    • 研究活動関係・・・・・・・・・・(1人)
    • 金融・保険関係・・・・・・・・・(1人)
    • その他(国際戦略本部長が必要と認める分野)・・・・(若干名)
    また、アクション・プランの効果的・効率的な実施を行うため、学内の国際業務関係部局の管理職を国際事業アドバイザーとして、積極的に活用し、当該分野における学内の連携強化を図る。
  2. 国際事業アドバイザー
    • 北京事務所長
    • EUIJ東京コンソーシアム所長
    • 留学生センター長
    • 国際共同研究センター長

8. 海外拠点としての「北京事務所」の活用

本学の最初の海外拠点として2004年8月に設置した北京事務所は、日中企業の倫理と論理、そして理念形成を支援し、国際的な産学連携を通じて日中関係の発展に寄与することとする。また、当該事務所は中国人留学生及び日本人学生に日本あるいは中国へのゲイトウェイとして機能することによって、教育面における日中関係の発展と強化に寄与することを目的し、その達成のために以下の4つの大きな柱を中心に事業を展開する。

  1. 教育支援(教員のアジア地域における研究教育活動の支援、学生のアジア 地域における学習機会の充実、優秀な外国人留学生の確保)
  2. 研究支援(セミナー・シンポジウム・カンファランス等の開催、教員の研究調査活動の支援、研究業績の英語・中国語による公開・公刊)
  3. 交流活動(如水会員・帰国留学生の組織強化・活動拠点、産学官の連携活動推進、現地進出企業へのコンサルティング・情報提供・提携紹介等)
  4. 情報発信(広報誌、論文集の多言語による発刊、HP等による広報活動、中国人学生向けの相談窓口・現地説明会)

中国においては、すでに中国社会科学院や中国企業連合会や協定校などとの連携により、研修活動や研究教育支援活動が始まっているが、例えばタイのバンコクなどに北京事務所に続く海外拠点を設立することを視野に入れて、国際戦略の長期的発展を検討中である。

9. 国内拠点としての「EUIJ東京コンソーシアム」の活用

EUIJ(EU Institute in Japan)東京コンソーシアムは、欧州委員会の財政的支援を受けて、日本における欧州連合(EU)の高度な学術拠点として2004年に発足し、一橋大学を幹事校として、国際基督教大学、東京外国語大学及び津田塾大学の4大学からなるコンソーシアムとして機能している。EUIJは、EU研究・教育・広報活動の推進及び日本/EU間の国際交流促進の為のプロジェクトであり、すでに本学の国際戦略の一翼を担う活動を展開しているが、以下の3点を重要課題としてさらなる活動の拡充強化を図る。

  1. EUに関する教育・学術研究拠点として
    新しいEU関連教育科目の設置、4大学間でのEU科目単位互換の推進、一定単位以上のEU科目修得済み学生への修了証書の発行、欧州大学院大学との学術交流の推進、学生に対する2種類のEUIJ奨学金制度創設、客員教授の招聘、共同研究の推進、EU関連セミナー・講演、国際会議開催等。
  2. EU情報発信拠点として
    EUライブラリーの設置、EUIJメンバーズクラブ、ホームページの充実、ニュースレターの発行、年次報告の発行、EU関係機関との緊密な関係樹立による有益なEU情報発信。
  3. EUの普及活動の推進役として
    一般のEU理解の為、放送大学大学院でのEU講座の開設(2006年から4年間放映)、年4回のEU関連の講演、年1回の国際シンポジウム、年数回のワークショップ開催、企業向けEUビジネスセミナーの開催、公開講座の開催等。

10. 国際教育研究交流推進のための財源確保

本学は安定した財政基盤の確保のため、平成16年11月に「一橋大学基金」を創設した。この基金を効率的・効果的に活用し、学生交流協定校等への留学拡大や留学生の奨学金制度の整備などの学生支援、国際シンポジウム開催や教員等の海外派遣などの国際交流活動への支援等を行うこととしている。このため、如水会のネットワークを最大限に活用するなど、本学卒業生や企業に対し寄附を募り基金の安定と資金の確保を図る。

2. 世界に通用する職員の養成

事務部門の国際化と機能向上を推進するため、若手職員を毎年数名選抜し海外の協定校等に派遣して長期及び短期の海外研修を実施することにより、職員の国際的視野を広め、資質の向上を図り、国際関係業務への従事だけでなく、高度なマネージメント能力を備えた人材を養成する。

長期海外研修(3ヶ月〜6ヶ月)は、国際関係業務に現在従事しているか将来従事することを希望し、すでに国際関係業務をある程度こなせる英語力を有する者を対象に、高度な語学研修プログラムを受講、専門的な語学能力を身に付けさせると共に、研究者及び学生の受入・派遣等を中心に国際交流関係実務に関する専門的知識や能力を習得させるために、派遣先の大学等でインターンシップにも従事させるなど国際関係業務の総合的な研修とする。

短期海外研修(1ヶ月以内)は、国際関係業務に現在従事している又は将来従事することを希望してはいるが、渡航経験の少ない者等を対象とする。研修では、研究者及び学生の受入・派遣等を含め国際交流関係実務の全般に関して基礎から学ぶ機会を与える。

文部科学省や日本学術振興会が大学職員を対象として実施している海外研修・留学プログラムへの参加も支援する。さらにNPO法人等が開催する国際関係に有益な実務セミナー、危機管理セミナーあるいは自己啓発セミナー等へ積極的に職員を参加させ、職員全体の資質向上に役立てる。

職員全体の英語力を底上げするために、英語学校や人材養成機関と提携して、学内で英語研修を実施する。この研修では、英会話力の養成だけに偏らず、ウェブサイトの英文を読みこなせる程度の読解力の習得を目指す。英語能力が一定のレベルに達している職員から、英語が不得意な職員まで受講できるように、段階別のクラスを用意し、各職員のレベルに応じた英語力の強化が図れるようにする。

3. 海外広報の強化と一橋ブランドの確立

まず、UI/CI 活動を通して、一橋大学のロゴを確定し、学内のステーショナリー(名刺、レターヘッド等)や出版物での使用を普及させる。大学紹介のための様々な媒体(リーフレット、CD-ROM等)を作成し、用途に応じて使用しやすいようにする。

教育研究情報の世界的発信及び広報活動を展開するため本学のウェブサイトを充実させる。英語を始めとする多言語化を推進し、海外からのアクセスが容易にできるユーザーインターフェイスを持ったデザインと機能を構築し、一橋大学を世界にアピールする。本学の研究教育活動をデータベース化し、サイト上で公開することにより、海外に対して、一橋大学の研究教育活動の成果を発信でき、世界の研究者や学生にとって、有益な資料となることが期待される。

また、卒業生会組織である如水会の世界的ネットワークを積極的に活用し、一橋ブランドを拡大浸透させる。

4. キャンパス国際化の推進

国立、小平両キャンパスで提供される外国人留学生、外国人研究者・教員向けサービスの国際化を図る。具体的には各部局から発信される情報や学内の諸規程を多言語化する。ウェブサイトも基本的に多言語化(日本語、英語、中国語等)し、できるだけ各言語による情報量を等しくする。教務課や学生支援課でのサービスを日本語が十分にできない外国人留学生でも気軽に利用できるようにする。また、附属図書館や情報基盤センターのサービスも多言語化し、外国人留学生だけでなく、外国人研究者・教員も利用しやすい(国際的通用性を高める)ものとなるようにする。さらに、研究支援、人事労務関係のサービス、規則、情報も多言語化することにより、外国人研究者の受入れを促進し、外国人教員の採用が容易となる体制が整備される。

また、学内の表示や案内は日本語と英語を併記することにより、海外からの研究者や外国人留学生が迷わずに目的の建物に行き着くことができるようなキャンパス環境を提供する。

5. セーフティー・アブロード体制の整備

教育・研究交流における国際活動が、さまざまな外的要因により大きく揺れ動く時代になった。特に、国際情勢の変化の激しさ、教育研究交流活動の大衆化、国際プログラムの多様化、交流活動域の拡大傾向など、その変化のスピードは予想以上に早く、一方、日本人の危機意識のあり方は旧態依然のままである。特に近年、海外研修・留学、調査研究、国際シンポジウム、海外出張等の形で海外の大学や研究機関で活動をする学生・教職員の数が激増しているが、海外での滞在期間中に事故・病気・事件等の不測の事態に遭遇するケースも増加の一途をたどっている。多彩な国際プログラムを有する大学にとって、海外における安全管理対策は重大な関心事であるにもかかわらず、多くの場合、保険会社や旅行会社まかせになっているのが現状であろう。大学が独自の教育理念と危機対応のための綿密な安全対策が今ほど求められるときはなく、危機的状況の発生時の的確かつ迅速な対応は、大学の「責任」と「自立」において極めて重要なことであり、危機管理体制の構築はもっとも今日的な課題でもある。

本学では、セーフティー・アブロード体制のもと、海外で活動する学生・教職員を安全対策面及び法的側面の両面からサポートし、教育研究の交流活動を多角的に支援をするための組織を構築するなど、想定されるさまざまな脅威や危機的状況に対応すべく、エキスパートのノウハウを結集して全学的な体制作りを目指すものである。特に、自然災害や国際テロに始まって、異文化適応や個人情報・知的財産権の管理等までをも視野に入れた危機管理体制を以下のとおり整備し、真の国際戦略の推進のための支援ができる体制を整備する計画である。

  1. 危機管理体制の構築及び緊急対策本部組織の立ち上げ
  2. リスク情報の収集、リスクの分析、及び危機管理マニュアルの策定
  3. 学生教職員向けの行動規範の策定
  4. 学生・教職員を対象とした異文化トレーニングの提供
  5. 学生・教職員を対象とした危機管理オリエンテーションの提供
  6. 教職員による危機管理シミュレーションの体験
  7. 教職員むけのメディアトレーニングの実施
  8. コンプライアンス体制の整備
  9. 協定書・契約書等の整備
  10. 海外事故対策保険や賠償責任保険等の検討

日本の大学は、その独特の組織文化ゆえに、悪しき前例主義や慣例主義に席巻されているが、国際プログラムの開発やその維持においては、安全管理・危機管理の視点から 新たな切り口で国際活動の支援体制や環境を再検討することが必至となる。上記のようなリスクマネジメントにおけるインフラストラクチャーを徹底整備することにより、本学の国際戦略を推進するにあたって、その体制を「リスク回避型」から「リスク対応型」へと前進させ、より安全により大きなリターンを獲得することを目指す。