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若手研究者海外派遣

事業の概要

事業の目的

一橋大学は、商学(ビジネス)、経済学、法学、社会学、国際関係論、人類学、政治学等からなる社会科学諸分野の研究と教育を包括的に対象とする大学である。このような社会科学重点大学(School of Social Sciences、以下3S)として、本学はこれまで若手研究者の育成支援を推進してきた。同時に、社会科学分野に重点をおき、すぐれた研究・教育成果を挙げている海外の主要大学との間で学術協定の締結や研究者の積極的な交流を行うことを通じて、研究ネットワークの構築を進めている。本プログラムは、そうしたネットワークを活用して、3Sの連携強化という本学の方針にもとづき、若手研究者を海外協定校などに派遣することを目的としたものであり、国際化にむけた本学の枢要なプロジェクトと位置づけられる。さらに、これまで研究科単位で実施されてきた若手研究者のキヤリア形成支援についても、本プログラムを全学レベルで推進することにより、すべての若手研究者に統一的な支援の手を差し伸べることを目的としている。

本事業は、上述の事業目的の実現を、次の2点から図る。
第一点は、一橋大学が誇る「学術を実践の場で鍛えていく実学的学問伝統」を重視することである。すなわち、若手研究者が国際的な現場において大学で学んだ社会科学的知見を鍛え、研究内容をより高度にするトレーニングを行うことである。第二点は、事業対象となるポスト・ドクター(以下PD)、大学院学生、学部学生に対し、課程横断的支援と課程固有的支援という複数の視点から支援を行い、両者の有機的結合を行うことを本事業の基本的理念とする点である。

課程横断性とは、学術的国際交流や国際的発信において課程を超えて必要になる、専門言語での情報収集、英語での学術発表やディベートなど対人的能力を身につけ、絶えずその練磨を図ることを意味する。

一方、課程固有性とは、博士学位論文を終え、専門分野における最先端の知識を備えたPDのさらなる進化には何が必要であるのか、また博士学位論文作成に向かおうとする博士後期課程学生には最優先事項である論文完成に何が必要であるのか、博士後期課程に進学する準備段階にある修士課程学生には、どのような学術基盤形成をトレーニングとして課すべきなのか、アカデミックキャリアを志望する学部学生に国際的な学術経験を蓄積させるにはどのようなプログラムが必要かなど、課程によって相異なる戦略的支援が若手研究者育成には必要だという認識である。

本事業は、これら二つの観点を教育戦略として認識し、課程横断性を前提に、課程固有性にもとづいた以下の海外派遣を行う。

  1. PDに対しては、2~12か月の長期海外派遣を行い、成果を要求する。成果とは海外学術雑誌での査読論文の発表、派遣先機関でのシンポジウムの立案運営と報告書作成などである。
  2. 博士後期課程学生に対しては、目安として2か月程度までの海外派遣を行い、学位論文作成に必要な学術資料の獲得(フィールドワークや資料調査)、国際的発信(学会発表など)、集中講義やインターンシップへの参加などを個人単位として行わせる。その成果を帰国後に指導教員に提出させ、その評価を含めた成果分析を国際化推進室が行う。
  3. アカデミックキャリアを志望する学部学生に対しては、国際的な学術環境に参加させ、研究者をめざす者としての自己認識を確立させる。具体的には、国際機関と提携し海外でのフィールドワークやセミナー・研修に参加する機会を与える。本学はすでに外国の大学とのこのような共同教育を行っており、それをさらにシステム化していく。

本学は社会科学の総合大学としての特徴を生かし、世界の主要大学と社会科学研究における連携に傾注しており、学術交流協定の拡大・強化に努めている。本プログラムの実施にあたっては、交流協定校を中心として受け入れ校との綿密な連携のもとに執り行う。

事業の内容と実施計画

1. 事業計画がカバーする学術分野

商学(ビジネス)、経済学、法学、社会学、国際関係論、人類学、政治学等の社会科学諸分野を対象とする。

2. 事業運営体制

本事業は、一橋大学国際化推進室(室長:大芝亮副学長)において、担当研究者(担当教員)名簿に記載されている教員によって運営委員会を組織し、派遣者の選定等最終的な意思決定はこの委員会において行う。同委員長は担当教員主担当の辻琢也役員補佐(研究担当)が務めるという運営組織をとる(図1)。運営委員は、各部局を代表しており、それぞれの研究者育成の方法に根ざして本事業計画を運営する。

図1 事業運営体制
図1:事業運営体制

本学の派遣プログラムは、各研究科が行う事業を基本としており、国際化推進室に設置する運営委員会は、各研究科の事業を総括する形式をとる。運営委員会の役割は、1. 事業全体に関する方針の策定、2. 派遣対象者の選考、3. 事業実施の全体像の把握、4. 実施成果の評価と公表、5. 事業の改善計画の策定と実行に分けられる。

  1. 事業方針の策定
    社会科学重点大学(3S)との連携、学術交流協定を行っている大学との関係強化、大学全体としての人材育成等の視点に留意しつつ、大学としての戦略性を持ったものとする。そのもとに、各研究科の方針も反映させつつ、大学としての若手研究者派遣の基本方針を策定する。
  2. 派遣者の選考
    派遣者の選考については、上述の派遣基本方針にしたがって、各研究科の派遣事業において基本的な候補者の選定を行い、運営委員会において最終的な決定を行う。各研究科の候補者の選定については、一定のルールを策定する。
  3. 実施段階での全体像の把握
    受入先校との交渉、連絡、契約(必要な場合)等は各研究科において行う。運営委員会は実施段階において、事業実施に関する包括的な情報を管理し、必要に応じて適切な措置を講じる。とくに、本プログラムの全体的なコーディネーションについては、担当教員主担当の辻琢也役員補佐(研究担当)のもとでガトゥクイ明香助手が行う。
  4. 実施成果の評価と公表
    運営委員会は各事業の実施によって得られた成果についての情報を一元的に管理し、評価、公表する。とくに、PD、博士後期課程学生については、国際学会における成果や研究成果の学術論文としての発表等に関して留意する。
  5. プロセスの改善
    運営委員会は各研究科と協議しつつ、事業実施の成果を全体として把握し、プロセスや内容の改善を提案し実施する。PDCAサイクルとしての機能を担う。

3. 派遣対象者の選考基準・方法

国際化推進室のなかに運営委員会を設置し、学内公募型の公募要領・選抜要領を作成する。派遣事業ごとの候補者は各研究科において選定し、運営委員会は最終的な意思決定を行う。選考における基本的な考え方は、(1)大学の基本方針である3S連携強化に合致しているかどうか、(2)問題意識と派遣先の関係が適切かつ明確なものであるかどうかである。以上に加えて、各派遣対象者別には以下のような基準を考える。

  1. PD
    PDについては、海外派遣中の研究計画、博士学位論文との整合性、出版計画、言語能力などを提出させ、審査を行う。
  2. 大学院博士後期課程
    大学院博士後期課程に在学する学生については、学位論文作成との整合性、これまでの成果との関係、指導教員の評価書、言語能力証明書などを提出させ、審査を行う。
  3. 学部学生
    学部学生については、国際機関との連携で事業を行うことを前提としているため、事業内容に興味を持ち、成績優秀であるもの、将来アカデミックなキャリアをめざしているものであること等について審査を行う。

4. 派遣者の安全確保等危機管理体制

派遣者の安全確保等危機管理体制については、担当教員主担当の辻琢也役員補佐およびガトゥクイ明香助手が中心となって、海外安全情報収集・提供、派遣前の海外安全講習の開催等を行う。派遣対象者である学生・PD等若手研究者には、海外傷害旅行保険への加入、併せて派遣前の海外安全講習への参加を義務付けることにより、海外での危機管理に対する備えを万全にする。さらに、本学同窓会組織である如水会は、世界主要都市を中心に46箇所に支部を設けているため、万が一のための情報提供や安全確保等の協力を要請する。本学は、すでに平成19年3月に「一橋大学危機管理規則」を制定し、「一橋大学危機管理室」を設置しているので、若手研究者海外派遣事業運営委員会と危機管理室が連携し、危機管理に万全の体制で臨む。

5. 事業の将来構想

各研究科においては上記のような課程横断性と課程固有性にもとづく若手研究者育成が図られていくが、国際化推進室としては、研究科横断的な機動的人材養成計画をめざしている。学部においては、1年次、2年次の教育を強化し、海外での短期プログラムを通じて国際的人材養成の基盤を作る。留学生を積極的に受入、キャンパスの国際化を推進するとともに、英語で学ぶ教育環境を整備する。それは、本学が社会科学に特化した大学であるという特色を生かした目的の選択と資源の集中によって可能となる。研究者養成を主眼とする大学院として、本学は次の2点を重視する。 第一点は、なによりも質の良い大学院生の育成である。3Sの活用によって、相当の割合の大学院生を海外の大学においてトレーニングすることが可能である。

第二点は、そうして育成した大学院生に対し、ジョブマーケットで採用されうるよう大学として努力することである。これは、国内外の教員・研究員公募、研究関連の任期付きポストなどに自信をもって出ていけるよう、大学としてサポート業務を行うことである。具体的には、博士号を取得している支援者を雇用し、博士後期課程学生やPDのための個別面談やアカデミックキャリアのトラックに入るために必要な能力を磨く講習会などを企画していくことである。

このような努力を行って初めて、本学は大学院重点化大学と名乗ることができ、すぐれた若手研究者を世に送り出すことができると思料する。

6. 事業の研究成果の若手研究者育成への反映・質の向上

「事業の目的・必要性」において述べたように、本計画では課程横断性と課程固有性の両方の視点から事業展開を行う。課程横断性に意を用いることにより、各段階の若手研究者は、社会科学諸分野において国際的な情報収集力、企画実践力、発信力、ディベート力、交渉力など実践的な能力を現場において鍛え、身に付けていく。 また、課程固有性を重視した派遣計画を立てることから、PD、大学院生、学部学生の現状とニーズに即した海外派遣が可能になり、無駄のない計画的な人材養成が可能になる。それは、我が国の研究者市場の質を向上させるだけでなく、国際的に認知される研究者輩出につながる。

派遣先・研究課題

平成21・22年度派遣先・研究課題一覧

平成23年度派遣先・研究課題一覧

平成24年度派遣先・研究課題一覧